希望の党政策原案について疑問
あまり政治的な発言はしないようにしていますが、小池百合子東京都知事が代表を務める希望の党の政策原案で気になった点が幾つかあったのでちょっとブログに記しておきたいと思います。
特に内部留保課税についてです。
消費増税を先送りすれば財政悪化は避けられない。原案では増税の代替財源として「約300兆円もある大企業の内部留保への課税を検討」と明記。「内部留保を雇用創出や設備投資に回すことを促し、税収増と経済成長の両立を目指す」と指摘したが、財政再建目標は示していない。 出典;日経経済新聞
今回はこの内部留保課税について考えてみたいと思います。
内部留保とは
内部留保課税について見ていく前にその前提となる内部留保について考えてみましょう。
まず、簿記上に内部留保という科目等があるわけではありません。
会社が得た利益のうち、配当など社外流出させず企業の内部へ蓄積した部分の事を内部留保と言います。
内部留保についてはいろいろな見解がありますが、一般的に貸借対照表でいう純資産の部の利益剰余金のことを指します。
内部留保と現金預金はイコールではない
政治家や報道機関で「企業が内部留保を溜め込んでいるのが問題だ」って発言をよく耳にします。
ちょっと辛口に言わせていただくとその発言をしている人たちはそもそも内部留保が理解できていません。
(知ってて言ってたらごめんなさい)
そのために勘違いしている方が多いですが内部留保(利益剰余金)=現金預金とは違います。
また、言葉のイメージから勘違いしやすいですが余っているお金という意味でもありません。
お金を蓄積している話とは全く別なのです。
例えば新しく資本金1000万で会社をはじめた方が1000万円の利益(税引き後)を稼いだとします。
配当等をださなければ利益剰余金は1000万円となります。
この場合、まったく投資等をせず、すべて現金商売してれば単純計算で現金預金は2000万あることになります。
しかし、そんなことは普通ありえません。
車も買うでしょうし、商品の在庫も買うでしょう。建物も買うかもしれません。
どこかの会社の株を買うことも考えられます。
そうなれば現金預金は減りますよね。
しかし、利益剰余金は減りません。
例えば土地(わかりやすいように減価償却の影響のない土地としています)を1500万購入、商品在庫を300万、他社の株を200万買ったとすればこの企業の現金預金は0です。
しかし、利益剰余金は1000万あるのです。
ここに勘違いがあるのです。
内部留保課税とは・・・
内部留保課税のやり方については具体的な方法がでていませんので想像ですが、この利益剰余金に課税しようとしているのでしょう。
先程の例などはお金はもうすでに投資等に回してありません。
それなのに内部留保に課税されたらたまったものではありませんよね・・・
希望の党の内部留保課税の目的である「雇用創出や設備投資に回すことを促し、税収増と経済成長の両立を目指す」のうち設備投資に回すことはすでに実現されているのにです。
2重課税問題
さらにもう一つ大きな問題があります。
麻生財務大臣も指摘していた二重課税の問題です。
企業は利益が出たらそのうち4割近くを法人税等として納税します。
その残った金額のうち配当等に回さない部分が内部留保(利益剰余金)となります。
つまり、もし内部留保課税が行われれば税金を引かれた後に残ったものに更に税金を掛けることになるのです。
完全に2重課税ですよね・・・。
雇用創出に回した場合
もう一つ問題があります。
希望の党の内部留保課税導入の目的が「雇用創出や設備投資に回すことを促し、税収増と経済成長の両立を目指す」でした。
もし、そのうちの雇用創出に回ったらどうなるでしょうか?
これは人件費(給料や法定福利費、採用費用)が増えることになりますので損益計算書上の利益を減らす事になります。
利益が減れば法人税等の納税が減ります。
内部留保課税がどれくらいの率にするつもりかわかりませんが、法人税等の40%くらいはとれないでしょう。
となれば税収が減ることが予想されます。
国の借金問題、社会保険の財源問題とかありますが、税収減らしていいのでしょうか。。。
そもそもの目的の1つ増収増には繫がりませんよね。
もし余剰資金に課税したいならば・・・
もし、企業の余剰資金に課税したいと考えるならば預金課税が考えられるでしょう。
預金してれば目減りするってことです。
そうなれば企業は必要最小限しか現金預金を持たず、株や債権に資金を回したり
設備投資、人件費等にまわすことも考えられます。
余剰資金課税もデメリットが大きい。
ただ、これもデメリットも多いです。
例えば業績の良い大企業などはお金が必要なときに借りられますから預金をあまり持たなくても問題ないでしょう。
しかし、中小企業はお金を調達するのが大変ですから預金で持ちたいはずです。
それに課税すれば預金残高は減らす企業がほとんどでしょうが、
資金繰りが上手くいかなければ倒産してしまうということも考えられます。
とくにベンチャー企業など急成長を目指す企業ほど急な資金が必要です。
その会社たちの成長を止めてしまう可能性も大いにあります。
「雇用創出や設備投資に回すことを促し、税収増と経済成長の両立を目指す」
という目的でこの案はちょっと違うかな・・・って感じがしますね。
ベーシックインカム
個人的には希望の党の公約については当初の報道で出ていたベーシックインカムの議論をぜひすすめてもらいたいなって思います。
ベーシックインカムとは最低限生活できるお金を性別や年齢、所得、社会的身分など一切関係なく一律、無条件に配る制度です。
問題は財源です。
社会保険労務士の私が言うのもなんですが現在の社会保険制度はかなり複雑です。
それらを取りやめてベーシックインカムを導入し単純化することで財源とします。
ベーシックインカムが導入されれば社会保険労務士の役目は終わっちゃいそうですけどね(笑)
問題は山ほどあるでしょうが検討するに値する制度だと思います。
すでにフィンランドやオランダ、カナダなどでは実証実験が行われています。
まとめ
今回は希望の党の政策原案の内部留保課税について見てみました。
ちょっと問題大アリな制度ですので考え直していただきないな〜って思います。
それよりもベーシックインカムを検討してほしいところですね。
最後まで読んで頂きありがとうございます。