6月4日にMr.Childrenの新アルバムが2年7ヶ月ぶりに発売されます。
楽しみにされている方も多いのではないでしょうか?
私もNakedの方を予約しております。
さて、この新アルバム「REFLECTION」は新しい価格体系となっています。
今回はこのアルバムの価格を例に価格の重要性を考えてみたいと思います。
ミスチルの新アルバム「REFLECTION」
まず、このアルバムは以下の価格体系となっています。
REFLECTION{Naked}完全限定生産盤(CD+DVD+USB) 9,000円
REFLECTION{Drip}初回盤 3,213円(初回盤)
REFLECTION{Drip}通常盤2,913円(通常盤)
(すべて外税)
の3種類となっています。
このうち、REFLECTION{Drip}は今までのアルバムと同様の価格設定の内容です。
REFLECTION{Naked}はREFLECTION{Drip}にプラスして
未収録曲の新曲が入ったUSB、ハイレゾ音源、写真集、デモ音源など
ファンにはたまらない追加特典がついています。
つまり、ファン向け商品です。
REFLECTIONの価格設定
さて、ここで価格設定をもう一度見てみましょう。
今回は通常の価格のREFLECTION{Drip}と
ファン向けで価格が3倍近いREFLECTION{Naked}
の2種類(通常盤、初回盤はそれほど価格差がないため考慮しません)です。
CDの外部環境
CDが売れなくなっていると言われて久しいですが、
その辺りも考慮して価格改定に伴う利益の変化を見ていきたいと思います。
まず、CDの売り上げは10年前と比較して半分近くに落ちています。
前回のミスチルアルバム「(an imitation) blood orange」の出た2012年と
昨年2014年を比較してもCD全体の売上でアルバムで24%近く落ち込んでいます。
2年で24%の減少はCDビジネスが崩壊する可能性のある
異常事態であるといえるかもしれません。
ミスチルのCDの売上
ミスチルも例外ではありません。
直近のシングルの売り上げは2012年発売の祈り(27.5万枚)から
2014年発売の足音(17万枚)へ大きく落ち込んでいます。
ミスチルの前回シングルから足音への売り上げの落ち込みを勘案した
比率で今回のアルバムの売上を予想すると前回のアルバム「(an imitation) blood orange」が76.5万枚ですので47.3万枚くらいとなります。
利益はどうなる?
ではこの場合、利益はどうなるのでしょうか?
アルバム製作の際に会社に残る直接の利益(貢献利益)は40%前後だと言われています。
つまり、前回のアルバムでの利益は、76.5万枚×3,000円で22億9500万円が売り上げで、そのうち40%が利益ですので9億1800万円となります。
では、47.3万枚へ売り上げ枚数が落ちた場合はどうでしょう?
仮に前回と同様にすべて3000円のアルバムだとすると売上は14億1900万円となります。
そのうち40%が貢献利益ですので5億5760万円となります。
ここから従業員の給料や家賃などのCDの売り上げの上下に関係なくかかる固定費を引くことになります。
金額が公表されてませんので仮に5億円だとすると(商品もこれしかないとして)
利益は前者が4億1800万円、後者は5760万円の利益となります。
つまり、売り上げ枚数の減少で利益が減るのは3億6040万円となります。
価格体系を変更した場合
では今回の価格のような価格体系にした場合はどうなるでしょう?
NakedとDripの比率がわかりませんので仮に半々としてみましょう。
利益率も40%と仮定します。Dripは2つの価格がありますが分かりやすくする
ために3000円とします。
この場合、それぞれの売上は23.65万枚ずつとなります。
Nakedの売上は23.65万枚×9000円 21億2850万円
Dripは23.65万枚×3000円 7億950万円
合計の売上は28億3800万円
貢献利益が40%ですので11億3520万円となります。
固定費は変わりませんので5億として6億3520万円の利益となるのです。
あくまでシングルCDの落ち込みと同じくらい今回のアルバムの売上が落ち込み
NakedとDripの比率が半々、利益率もNaked、Dripとも40%として、
固定費を5億として、カラオケなどその他の売り上げを考えず、
の仮定の計算ですが売上数が大きく落ち込んでも利益は前回のアルバムより多くなるのです。
もちろん価格の値上げによる売り上げ減少も考慮する必要はあるでしょうが
ファンが根強いミスチルならそれほど落ちないでしょう。また曲数が増えていること、
ハイレゾ化などうれしい特典も多いですから反発は少ないと思われます。
また、Dripという普通の価格の商品もあることも大きいでしょう。
そのため、価格を上げたことによる売り上げ減は少ないと予想しています。
ちなみに今回のアルバムが38万2千5百枚の売上でNakedとDripの比率が半々の場合で
利益額が前回の「(an imitation) blood orange」と同じとなります。
価格を上げることで大きな売り上げ減少となっても利益を減らさずに耐えることができるのです。
様々な仮定に基づいていますので正確なことはわかりませんが、
今回のMr.Childrenの新アルバムの価格戦略はCDという媒体の落ち込みから考えても
企業の利益という観点からみれば正解のやり方だと思います。
今回はCDアルバムで計算してみましたが他の業界も同じです。
価格を上げることさえできれば、仮に売上数が落ちたとしても
利益を上げることができるケースは多いです。
ぜひ一度自社のケースで算定してみてください。
今回のまとめ
価格を上げることさえできれば売上数量が大きく下がっても利益を確保、もしくは増やすこともできる。