先日の日経新聞にかなり興味深い記事がでていました。
税・社会保険の書類を2021年を目処に不要にするという話です。
今現在の税・社会保険の手続きは本当に面倒なものが多いです。
例えば一般的な株式会社の場合、こんなことを毎年行わなければなりません。
毎月10日までに源泉所得税を納付
7月10日までに労働保険の年度更新、社会保険の算定基礎届を提出
賞与を出せば賞与支払届けを提出
給料が改定すれば月額変更届を提出
年末には年末調整を行い、1月31日までには法定調書を提出。
そして決算から2ヶ月以内に決算申告を行う
他にもここに書ききれないくらいあります。
かなり面倒なんですよね。
それら作業を削減できるなら個人的には今回の件、かなり賛成です。
しかし、現状手続き業務で食べている社会保険労務士や税理士にとってみれば死活問題ともなりかねない話でもあります。
また、手続きが簡単になればなるほど企業にお勤めの経理担当者、総務担当者などの業務も減ることになります。
そのため現状の仕事(ポジション)がいつまであるのか・・・といった問題もあります。
今回はこの件を掘り下げて考えて見たいと思います。
税・社会保険の書類が不要の概要
今回の日経の記事を簡単にまとめるとこんな感じです。
政府は2021年度を目標に企業による税・社会保険料関連の書類の作成や提出を不要にする検討に入った。源泉徴収に必要な税務書類など従業員に関連する書類が対象。企業は給与情報などをクラウドにあげ、行政側がそのデータにアクセスし、手続きを進める形に変える。官民双方の事務負担を減らして生産性を高め、スタートアップ企業の創業も後押しする。政府のIT総合戦略本部(本部長・安倍晋三首相)が来年3月末までに実現に向けた工程表を示す。7月に財務省や厚生労働省、総務省などの関係省庁を集め、検討会議を開く。
出所:日経新聞 7/3 朝刊
簡単に言えば複雑な税・社会保険の手続を企業がクラウドサービスを使うことで簡略化しようぜってことです。
今回の日経の記事はおそらく規制改革推進会議の会議の内容によるものだと思われます。
まだ議事録等がアップされていませんので過去の資料をみていくとこんなのがありました。
4月24日に規制改革推進会議行政手続部会が出した「行政手続きコスト削減に向けて」です。
これによると行政手続きのコストが22%も削減されることがわかります。
今までどれだけ無駄だったんだ・・・って感じもありますが(笑)
出所:規制改革推進会議行政手続部会「行政手続きコスト削減に向けて」
これ以外に企業側の時間削減も大きいと思われますから積極的に導入してほしいところです。
税理士・社会保険労務士などの士業や企業の経理・総務担当者はどうなる
今回のような制度が導入されると企業側・行政側ともウインウインですが、今までこれら業務を請け負っていた税理士・社会保険労務士・行政書士・司法書士などの士業には死活問題となりかねない事態となるでしょう。
また、企業内部でもこれら業務に携わっていた人の仕事が無くなる可能性があります。
例えば社会保険に関する手続きにはこう書いてあります。
最終的には原則として企業からの重複書類の提出手続きを不要とすることを目指し(1)大法人に関する電子申請の義務化、(2)マイナンバーの活用による手続の 廃止等、(3)従業員本人の押印・署名の省略、(4)「ワンストップ・ワンスオンリー 化」の実現などに取り組む。
つまり、最終的には手続き関連がかなり簡略化されることになります。
そうなればわざわざお金を出して社会保険労務士を雇う人はかなり減る可能性が高いでしょう。
他の士業も同様になると考えられます。
すでに同様の政策を国がおこなったことで会計士や税理士がいなくなった国もあります。
また、AIの進歩も大きいです。
例えば会計ソフトのMFクラウドやfreeeなどを使うとかなり会計分野の時間が削減できます。
同じく給料計算や請求書発行、経費精算などもクラウドやAIを活用すると削減できるのです。
今回の制度変更で仕事がなくならなくても今後この流れは今後大きく加速する可能性でしょう。
そのためこれら業務に携わっている士業、従業員も不要になってくる可能性が高いと考えます。
士業や経理・総務担当者などが生き残るためには
今回の件に限らずAIの進歩とクラウドによって書類作成など作業業務は大幅に減るでしょう。
そのため、それ以外のところで能力を培う必要があるのです。
私の好きな言葉に
「変革せよ。変革が必要となる前に」
という言葉があります。
ゼネラルエレクトリック社のCEOで「伝説の経営者」と言われたジャック・ウェルチの言葉ですね。
簡単に言えば変化を迫られる前に、自分から変わりなさい、必要な行動を取りなさいということですね。
現在の士業、経理総務担当は変革が迫られる時期が迫っていると思われます。
その前に変革が必要なのです。
例えば税理士や社会保険労務士などの士業ならば単純な作業を代行するのではなくコンサルタント能力が今まで以上に重要になるでしょう。
また、経理・総務担当者ならば管理会計、資金繰りや人事労務の知識などAIが代替えしにくい作業以外のところの能力が必要になります。
それら能力を変革が必要となる前に高めておきましょう。
そうすることで生き残る可能性がぐんっとあがるはずです。
まとめ
今回は「【税・社会保険の書類が不要に】税理士・社労士や経理・総務担当者は生き残れるのか?」と題して行政改革とAIによる士業・経理総務担当者の生き残りについて見ていきました。
大きく変わろうとしています。
大きな流れに逆らっても勝てる確率は少ないです。
流れに乗りながらも自分の立ち位置を確立することが大事でしょうね。
今回は士業と経理総務担当者についてみてきましたがAIにより9割の仕事が不要になるとも言われています。
大きな変化が訪れる前に自分が必要とされるように変革したいところですね。
読んでいただきありがとうございました。